- Sencha.com—Japanese
Sencha

Ext JS における MVVM パターンの方法と理由

2020-06-23 869 Views
表示
この記事は Ron Bailey による The How and Why of the MVVM Pattern in Ext JS の抄訳です。

アプリケーションの構造とコードは、上手くまとめることで意図を伝えることができます。

コードを書くことはターゲットデバイスと効率的に通信を行う手段ではありますが、デザインパターンを適切に選択して適用することが不可欠です。それにより、開発者はプロジェクトに適した技術的なフレームワークと効果的に連携・通信ができるようになります。

これらのニーズを満たす十分に試行されたパターンの一つは、業界標準である MVC(モデル・ビュー・コントローラ)パターンです。MVC パターンは、ユーザーが触れるアプリケーションの主な懸念事項を抽象化する目的を果たします。つまり、アプリケーションのデータ(モデル)、表示(ビュー)、そしてそれら二つを接続する処理(コントローラ)を分離し、個別に取り組めるようにします。ただし、それらは緩やかに結合しており、相互に依存する関係を保っています。このようにすることで、一つに変更を加えても、他に過度の影響をもたらしたり、アプリケーション全体を危うくしたりすることがなくなります。

最初の MVC パターンが登場して以来、多様な実装と環境に合わせて多くの派生が作られました。Ext JS バージョン 5 以降の Web アプリケーションに最適なものは MVVM(モデル・ビュー・ビューモデル)パターンで、それ以前の Ext JS バージョンで使用していた既成の MVC パターンに代わるものとして採用されました。

Ext JS の MVVM パターンでは、元の MVC が持つ利点に加え、ビューパッケージという個別の MVC パターンで各ビューをより柔軟に管理することができます。

ビューパッケージは、次のような構成になっています。

1) モデル:アプリがデータを取得するインターフェースとデータ定義を処理します。

2) ビュー:レイアウトやコンポーネント構成といった表示の問題を正確に解決します。

3) ビューモデル:ビューのためにデータの表示と更新を管理します。

4) ビューコントローラ:ビュー(ユーザーのクリック)とビューモデル(ストアの読み込み)から起動するイベントハンドラやライフサイクル関数の実装を持ちます。

これらは、保存先フォルダの専用クラスとして別名を付けたビューのプロパティとして作成します。例えば、view フォルダにある login フォルダに保存されている認証戦略は、次のようなクラスファイルを含んでいます。

LoginView.js
LoginViewModel.js
LoginViewController.js

関連ファイルを所定のフォルダに配置することで、開発者はアプリの構造化とモジュール設計を活用でき、認証機能全体をフォルダにカプセル化して容易に移動できるようになります。

このアプローチには、実装がコンポーネント階層のあらゆるレベルで可能になるという追加の利点もあります。これは、グローバル定義のオブジェクトによる JavaScript の性能問題を解決します。つまり、グローバルレベルだけではなく任意のレベルでパターンを展開できるため、外部のスクリプトやライブラリから読み込まれた他のオブジェクトとの衝突を回避できます。グローバル定義のオブジェクトは、やがてメモリ内に居座り、時間と共にアプリの性能に影響を及ぼす可能性があります。例えば、他の操作用にアプリの資源を節約するためには、ビューのデータ(ビュー用のストアといいます)がそれを使用しているコンポーネントのすぐ上にあるレベルで定義される必要があります。MVC のようにグローバルレベルで定義する必要はありません。

Ext JS における MVVM の実装には、アプリケーションで大いに役立つ機能が他にもいくつかあります。それらの中でも主なものは、ビューにあるコンポーネントのプロパティ間でバインディングする概念の実装です。

これは、エンドユーザーに表示するデータの実行時更新に対応する必要があり、そのために体系的なパターンを形成しているアプリの一般的な使用事例を解決します。ビューにあるコンポーネントのプロパティは、ビューにあるビューモデルの設定に「バインド」することができるため、ビューにある他のプロパティにもバインドが可能になる場合があります。これにより、ユーザー定義のイベント処理が不要になります。

アプリケーションに対する 2 種類のアプローチ(MVVM パターン無しで構築した例と MVVM パターンで構築した例)を比較してみると、その利点はすぐに明らかになります。

  • 標準搭載のコード分離により、ビューパッケージに属する補助メンバーの実装や評価を探すべき場所が明確になります。
    • アプリケーションがデータを取得する方法を確認したい場合は、モデルのファイルを参照します。
    • アプリケーションのヘッダーにあるテキストを配置変更したい場合は、ビューのファイルを参照します。
    • グリッドにバインドしたストアの実装を確認したい場合は、ビューモデルのファイルを参照します。
    • グリッド上の選択イベントに対するイベントハンドラの実装を確認したい場合は、ビューコントローラのファイルを参照します。
  • ファイルとフォルダの命名規則により、クラス間の関係を強化し、大規模なコードベースの経路案内を論理的かつ予測可能にします。
  • イベントハンドラやコントローラのライフサイクル関数で使用可能な、あるビューパッケージのメンバーから別ビューパッケージのメンバーを参照するための関数が用意されています。
    • this.getView().getItems()
    • this.getViewModel().getStore(“records”)
    • this.getController().invokeFn()
  • また、コードエディタで Sencha IDE PlugIn 拡張機能を使用すると、コントロール/コマンドキーを押しながら任意の alias(別名)コンフィグをクリックするだけで元のクラスを参照できるようになります。

機能は前後関係に応じて構造化することができます。従って、あるビューパッケージは別ビューパッケージに従属するもの(サブフォルダ)として実装できます。例えば、EditRecord(レコード編集)ビューパッケージは、ViewGrid(グリッド表示)ビューパッケージのサブフォルダとしてアプリケーション構造に保存できます。EditRecord ビューの目的は、おそらく ViewGrid から単一のレコードを編集することでしょう。

いつ MVVM パターンを使用すべきか?

MVVM パターンは、チームメンバーが開発と保守に携わる大規模プロジェクトに最適です。ただし、このパターンは、単純な PoC(概念実証)プロジェクトには大掛かり過ぎるかもしれません。また、バインディングの無秩序な実装はメモリに負担をかけるため、いつもバインディングが必要になるわけでもありません。ビューモデルのデータを実行時に更新してビューに反映する必要がある場合や、その逆の場合にのみ、バインディングを有効にすべきです。

次回の Ext JS プロジェクトで MVVM パターンの利点を活用すれば、より整った構成、より分かりやすい共同作業、そしてより予測可能な安定性が期待できます。加えて、さらに多くのグローバル設定が必要であれば、Ext JS の全バージョンで使用できる従来の MVC パターンを MVVM パターンと並行して使用することもできます。

詳細な Ext JS トレーニングのお申し込み

講師による MVVM パターンのより網羅的・実戦的な考察や、Ext JS に関する他のテーマについて知りたい方は、公式トレーニングの参加申し込みをして下さい

表示
Ext JS開発を今すぐ始めよう

140以上のコンポーネントと強力なツールでWebアプリを10倍速く構築

最新記事
GXT 4.2リリース
GXT 4.2リリース

Senchaチームは、GWT (旧 Google Web Toolkit) コンパイラを使用してWebアプリケーション開発を行う包括的なSencha Javaフレームワーク「GXT」のバージョン4.2をリリースしました。GXTを用いれば、Javaコードをコンパイルすることで、高度に最適化されたクロスプラットフォームHTML5アプリケーションを構築できます。

Rapid Ext JSの提供を開始 - Ext JSアプリケーション開発のためのローコードエディター
Rapid Ext JSの提供を開始 - Ext JSアプリケーション開発のためのローコードエディター

Ext JS開発を効率化し、生産性を加速する革新的なローコードエディター「Rapid Ext JS」の正式リリース「バージョン 1.0」の提供を開始しました。Sencha Ext JSを利用している開発者は、開発プロセスを効率化し、スムーズかつスピーディにWeb開発を推進できます。この記事では、Rapid Ext JSがExt JS開発プロジェクトの効率化にどのように貢献するのか、その主要な機能とともに紹介します。

Sencha Architect 4.3.6リリース
Sencha Architect 4.3.6リリース

Senchaチームは、Sencha Architect バージョン4.3.6の提供開始を発表します。この新バージョンでは、4.3.5リリースをベースとして、Ext JS 7.8での品質強化を受け、Classicツールキット向けの新機能Froalaサポートが追加されたほか、シームレスなインストール、容易なアップグレードプロセス、さらなる品質向上が図られています。

その他の記事

おすすめ記事

Sencha Architect 4.3.6リリース

Senchaチームは、Sencha Architect バージョン4.3.6の提供開始を発表します。この新バージョンでは、4.3.5リリースをベースとして、Ext JS 7.8での品質強化を受け、Classicツールキット向けの新機能Froalaサポートが追加されたほか、シームレスなインストール、容易なアップグレードプロセス、さらなる品質向上が図られています。

Sencha 2024/2025ロードマップ

このブログ記事では、近い将来に計画しているSencha製品のリリースについての詳細を説明します。Sencha チームでは、日々お客様と対話を続けており、皆さんのフィードバックが、製品全体の方向性の決定に大きな役割を果たしています。ロードマップアップデートの詳細を説明する前に、ここ数ヶ月で提供した内容についてまとめておきたいと思います。

Rapid Ext JS: エンタープライズ ローコード開発ツール

企業がどのように複雑なアプリを素早く構築しているのか、不思議に思ったことはありませんか? 今日のテクノロジー業界において、アプリケーションを素早く作成してリリースしたいという要求が重要になっています。そこで「ローコード開発」です。ローコード開発は、企業のソフトウェア開発の手法を変革します。そして、「Rapid Ext JS」が、開発者の作業を容易にします。

Ext JS ClassicとModern ツールキットの違いを理解する

Ext JSは、強力なWebアプリケーション/モバイルアプリケーションを構築するためのJavaScriptフレームワークです。フレームワークには、140を超える高性能でフルテスト済のカスタマイズ可能な UIウィジェット/コンポーネントが搭載されています。さらに、すべての最新ブラウザに対応し、クロスプラットフォーム開発をサポートしています。Ext JSは、アプリを構築するための2つのツールキット(Classic ToolkitとModern Toolkit)を提供しています。それぞれのツールキットは、異なるユースケースに対応するように設計されており、独自の機能と利点を提供します。

Ext JS 7.8リリース

このたび、Senchaチームは、Sencha Ext JS 7.8のリリースを発表しました。このリリースでは、7.7リリースに続き、Grid、Timefield、Chart、TreePanelなどユーザーの皆さんからの要望に応え、ModernおよびClassicツールキットに数多くの品質強化を行っています。また、Ext JS 7.8には、Classicツールキットの新機能Froalaに加え、CheckBox、Grid、DataViewの改善、Grid、Combo、CheckBox、Chart、Date Field、TreePanel、Storeなどに対する要望の多かった機能、双方のツールキットに対する品質改善が含まれます。

Virtual JS Days 2024 のハイライト

2024年2月20日~22日、第3回目となる「Virtual JavaScript Days」が開催されました。JavaScript の幅広いトピックを採り上げた数多くのセッションを実施。その内容は、Senchaの最新製品、ReExt、Rapid Ext JSまで多岐にわたり、JavaScriptの最新のサンプルも含まれます。 このカンファレンスでは多くのトピックをカバーしています。Senchaでセールスエンジニアを務めるMarc Gusmano氏は、注目すべきセッションを主催しました。Marc は Sencha の最新製品「ReExt」について、詳細なプレゼンテーションを実施。その機能とメリットを、参加者に理解してもらうべく詳細に説明しました。 カンファレンスは、Senchaのジェネラルマネージャを務めるStephen Strake氏によるキーノートでスタートしました。キーノートでは、会社の将来のビジョンについての洞察を共有しています。世界中から JavaScript 開発者、エンジニア、愛好家が集まるとてもエキサイティングなイベントとなりました。これは、JavaScript エコシステムの最新情報について学ぶユニークな機会と言えます。

ブログ記事一覧